とある土曜日、家族で出掛けた。
4歳娘がアイプリのゲームをやりたいというので、暑い中ゲームセンターへ行った。あっちっち。
中に入ると店員から「よかったらこれを」と、【クレーンゲーム100円で2回】【メダルゲーム20枚無料】のチケットをもらった。
家族全員分の4枚、つまりクレーンゲーム400円で8回、メダル80枚無料だ。
ほぉ、これはありがたい。メダルゲームは興味ないが、あとでクレーンゲームはやっておくか、と思った。
今すぐにでもやりたい気持ちはあったが、お昼頃でみんなお腹が空いている。
チケットはひとまずリュックにしまい、アイプリだけ楽しんでマックへ向かった。
食事を済ませると、夫が子どもたちを遊びに連れて行ってくれることになった。明日は自分が出掛けるから、きょうのんびりしてね、と。
ありがたく羽を伸ばすことにした。
とりあえず16時に美容院の予約を入れているが、何をしようか。
HIMAWARIのシャンプーとトリートメントを駆使してもなお、ちょうど肩ほどの長さの髪がいうことをきかず、出勤前の朝にリビングと洗面所をかけ回っている。
夫は先に出勤し、子どもたちはなかなかご飯を食べず、自分の髪も反抗期。
この煩わしさから解放されるべく、似合いはしないが手入れの楽な、縮毛矯正をすることにしたのだ。
美容院まで何をしようかとはいったものの、きょうはガストで、宣伝会議賞に応募するキャッチコピーを考えまくると決めていた。
さっさと行け自分。と思ったが、今からだと2時間ほどで退店することになる。美容院後には、家族と合流してまたガストで夕食の予定だ。
同じ店に行ったり来たりするのがめんどうに感じ、というか正直にいうと誘惑に負け、ひとりでゲーセンに行くことにした。
何にでもハマりやすいわたしが最近再燃しつつある、ゲーセンだ。
娘とアイプリをしたゲーセンとはまた別の、普段は1階をチラリと覗くだけの、少し古びたゲーセンに寄る。
へぇ、2階はこうなってたんだ。と、すでにドーパミンがドパドパ出るのを感じる。
最近ドパガキという言葉があるらしいが、ドパつむぎ、ドパつむだ。以後、そう呼ぶことにしよう。
ドパつむを「どーどー」となだめつつ、まずはひと通り店内を回ると、サラブレッドコレクションのぷっくりシールがあるではないか。

ここでも話したが、夫婦ともに競馬がすきなのだ。
夫は特にイクイノックス、ドウデュースがすきで、リバティアイランドもすきだと話していた。その、リバティのぷっくりシールがあるではないか。
あの、なんていうんだろう。プラスチックのボールチェーンみたいなものを、挟んで引きずり降ろしていくやつ。
名前がわからなくて今調べてみたら、どうやら「UFOあらかると」というようだ。

これこれ。
前にやってみて、相性がよかった憶えがある。
特に予算は決めていなかったが、まずは感触を確かめるためにやってみる。
「ビュイーーーーン」
はやっ。え、こんな速かったっけ。はやっ。ビビった。
まぁ1回目はこんなもんだということで、ここからが本番だ。
スピード感をつかんだこともあり、今度はチェーンをかすめる。本体を直接をずらすような形になったが、微動だにしない。
しっかりチェーンの根元を狙わないといけないやつか~…ということで、2回かけて少しずつ引きずり降ろし、400円でゲットした。

かんわいいいいいいい~~~~~
夫にあげよう。えっ、かわいい。
どんなリアクションするかな。
ドパつむテンションMAXで、先ほどチケットをもらっていたゲーセンに戻る。
メダルはいらんけど、とりあえずクレーンゲームだ。店内を一周し、特別やりたいものはなかった。ただ、10円クレーンゲームがあることに感激した。
少し前に親友と地元のゲーセンで遊んだときに、初めて10円クレーンゲームの存在を知ったのだ。近所にもあればいいのにと思っていたところ、あるではないか。
娘がよろこびそうな、花柄のシュシュにチャレンジすることにした。この台は1回20円だったが、1回目で2つゲット。
シュシュ自体は家にたくさんあるのだが、自分のチャレンジ欲をお安く満たせるのと、娘のよろこぶ顔見たさにやってみた。
さて、チケットはどのゲームで使おうかと思ったときに、MONSTERが目に入る。モンエナ。魔剤。
このわたくし、エナドリもすきなんです。ほんとうに、一度ハマるとくり返してしまう。
正確にはZONeがすきだ。カフェイン150mgのやつ。なんだか動ける気がして、一時期がんばりたいときのお供になっていた。
ただ、1本200円ほどで安くはないため、最近は我慢していた。業スーのやっすいコーヒーのお世話になっている。
今回はせっかくだからと、モンエナの台を選ぶ。初めて見るタイプで、くるくると回るエナドリたちを棒で押していくものだった。
400円で8回やった結果、4本をゲット。
スーパーで買うより安く手に入り、おまけにチャレンジ欲も満たせて、ドパつむ大喜び。
このあとどうしようか。
珍しくメダルゲームでもやってみるか……?
普段自分でやることはないが、タダならやらないものもったいない、という気持ちになる。
もったいないのは、すぐにガストに行っていれば美容院前に2時間コピーを考えられたのに、誘惑に負けたことだよ。そこに気付け自分。
そういや、メダルゲームってどう遊べばいいんだろう。
思い返すと、小学生のときだろうか。親だかクラスメイトだか忘れたが、一度誰かとやった記憶がある。
うろ覚えだけど、メダルが落ちる爽快感と、どこで終わらせればいいのかわからない困惑と、そんな感覚だけが残っている。
店員に声をかけ、メダルを80枚をもらう。
そうそう、確かこんなミニバケツ(?)みたいな容器に入ってたわ。と、八王子のラウンドワンの記憶が蘇る。
だけどこれ、最終的にどうなるんだっけ。当時どう終わらせたのか憶えてない。
「このメダルって、換金したり商品をもらったりできるんでしたっけ?」
そう店員に尋ねる。
メダルゲームを知っている人にとっては、なんて愚問を……と思うだろう。
「あっ、現金や商品には換えられないんですよ」
たまにこういう質問してくる人いるんだよな、と言わんばかりの表情の店員。
「あっ、なるほどそうなんですね。というと、えーっと……?」
なるほどと言いつつもピンときていないわたしを見て、こう続ける店員。
「あちらでご遊戯いただけます」
ご遊戯……!!
ご遊戯できるのですね!!
ラスベガスにでも来たのか。貴族の遊びなんかこれは。
聞き慣れない甘美な響きに内心ウッキウキで、早く夫と皆のものに伝えたかった。
きょうという日を忘れることはあっても、またふと思い出すだろう。
わたしも誰かにメダルゲームについて聞かれたら、「ご遊戯いただけます」と答えよう。
早く、誰かわたしに聞いてくれ。メダルゲームの遊び方を。
興奮して前置きが長くなったが、どの台でご遊戯するか、ひと通り見ることにした。
すると、ジャグラーがあるではないか。
少し前に看護師の友人と会った際、「ジャグラーデビューしたのよ。目押しできるようになった」という話を聞いた。
おおっ!これが噂の……!
次に会ったときに友人とその話をすべく、コイツに決めた。
ところが、どの台を見ても投入口に「100円」と書かれている。試しにメダルを入れても、そのまま戻ってきてしまう。
これは現金専用の台だったのか。メダルで遊べる台もあるのか?と探してみたが、なかなか見当たらない。
少し残念な気持ちで他を探してみると、海物語が目に飛び込んできた。
実はこれ、少し馴染みがある。というのも、父がたまに実家のパソコンでやっていた記憶があるのだ。
無料で楽しめるから、やったつもりになれるからと、確かそんなことを話していたと幼心に憶えている。
両親は酒もタバコも、ギャンブルにも縁がない人だと思っていた。
最近になって父に話を聞くと、競馬とパチンコは付き合いで経験したことがあるようだ。通い詰めるほどではないが、やったことはある、と。
お堅い両親のもと育ったという感覚があったため、ものすごく意外だった。と同時に、安心したような、父にもわたしと似たようなゲーム好きな一面があるのだと知り、うれしくなった。
自分もここ数年、たまに競馬をしているという話を恐る恐るすると、特別咎められることはなかった。
なんなら、三連単・三連複を当てて400円が26万円になったダイヤモンドSは、実家に帰省中、みんなで競馬番組を観ながら当てたものだった。(実家で観るな)
話が逸れたが、父の顔を思い浮かべながら、そんな懐かしい海物語の台を選んでみた。
だが、いまいちどう楽しめばいいのかわからない。
ご遊戯いただけるのはわかった。けど、換金もできなければ、商品ももらえない。
純粋な疑問として、Google先生に
「メダルゲーム 最終的にどうなる」
「メダルゲーム やる理由」
「メダルゲーム メリット」
と聞いてみた。
すると、「お金をたくさん賭けることなく満足感を得られる」「時間をつぶせる」などの回答が見つかった。
ほぇー。なるほどねぇ。
他にやりたいことがない方、時間をつぶしたい方にはいいかもしれない。
ふと、職場でギャンブル依存症の治療をしている、いろんな方の顔が思い浮かんだ。メダルゲームは、競馬やパチンコなどギャンブルの代替案になるのだろうかと。
いや、他人の話だけでない。
自分自身も、少額の競馬に加えてメダルゲームでも欲を満たすことができるのか、試してみたくなった。
ただ、やりたいことだらけモンスターの自分にとっては、なんとも不合理なゲームだ。この先に何があるというんだ。
それなら競馬のほうが楽しい。高額払い戻しの可能性もあるし。子どもと遊びながら自宅でもできるし。そう思った。
なんだかなぁと思いながら始めてみると、だんだんコツがわかってくる。なるほど、この角度で、このタイミングで、この勢いでメダルを入れるとうまく返ってくるのか、と。
はじめ80枚だったメダルが、途中でウェーブルーレットというイベントが発生し、500枚当たった。
ちなみに、このメダルはお金で買うと100円で10枚らしい。ということは、だ。今ジャラジャラと出てきているこれは、約5000円分だ。
たしかにこれは気持ちいい。
先ほどGoogle先生に聞いた際に、ジャックポットという言葉も知った。さらなるジャラジャラが待っている。
そう思うと次第に楽しくなっていき、なるほどこれはハマる人の気持ちもわかるかもしれない、と思うようになった。
楽しんでいると美容院の予約時間が近づいてきて、途中で切り上げることになった。
このメダルをどう預ければいいものかと店員に尋ね、暗証番号と指紋を登録し、メダルバンクなるものに預けた。ほぉーーーん。おもしろい仕組み。
こうして次回来たときにお金を使わず、メダルを引き出して楽しめるのか。よくできてるなぁ。
最終的に50枚ほどに減ったメダルを預け、美容院へ。
とぅるとぅる、さらさらにしてもらい、家族と合流してガストで食事を済ませる。この数時間のあれやこれやを夫と共有し、リバティのぷっくりシールは名刺ケースの内側に貼るとのこと。
ウッキウキでメダルゲームのご遊戯のことを話すと、ふだん4歳娘の話を聞くときと同じほほえみを向けられた。
食事を終え、20時頃に夫と子どもたちが先に帰り、自分は残って宣伝会議賞に応募する。
この応募期間中、ようやくまともに時間とれた気がする。これまでの欲を爆発させるように考えて応募していたものの、途中で身体の至るところがかゆいことに気づく。
多分ヤツだなと思っていたところ、目の前をブーンと黒いヤツが通り過ぎる。退治しようとパチンと手を挟んだが、虚しく空振る。
んあぁ。どっかいっちゃった。
なるべく気にしないようにして再開するものの、先ほどまで何ともなかった場所までかゆくなってきた。
ワンピースだから、きっと動きやすいスカートの中で無双しているんだろう。スター状態だ。
かゆすぎてやってられなくなり、21時半にガストを出た。23時半までここにいるつもりだったのに。
わたしは負けたのだ。もう少しここで集中して取り組みたかった。せっかくの機会なのに、すぐに帰るのもなぁ。
そう思っていたところ、美容院前に預けたメダルの存在を思い出す。
「あー、ゲーセンで続きやればいっか。中途半端に余ってるし、使いきっちゃえ」と。
もう一度やってみたら、メダルゲームの奥深さを味わうことになるかもしれない。一度やっただけではわからない楽しみが待っているかもしれない。
その謎を解明するため、我はゲーセンの奥地へと戻った。
戻るな。蚊に刺されながらもガストでキャッチコピーを考え続けろ。というかどうにか退治しろ。
という自分の声は、すぐさまゲーセンのモスキート音にかき消された。
空が暗くなってからの入店は、なんだか悪いことをしているみたいでワクワクすっぞ。
日中と同じ海物語で、同じ席を選ぶ。隣には、容器にどっさりとメダルが入ったおじいさまが。
思わず、コツでも聞いてみようかと思うほどだ。普通に大金で購入した可能性も否めないが。
日中よりは少し慣れた手つきで、わたし経験者ですが何か?という顔でご遊戯をはじめるドパつむ。
同時に宣伝会議賞の応募も再開したのだが、これがまぁ思いのほか捗る。
というのも、飲食店でやろうと思うと、他のお客の会話を拾ってしまうのだ。
聞き耳を立てているわけでもなく、聴覚過敏とでもいうのだろうか。わからないが、思えば小学生の頃から、授業中に音楽室からの音が気になって、集中できないことも多かった。
ピアノをやっており音感があったせいか、全部音名となって流れ込んできて、聴き流すことが難しいのだ。
ちなみに仕事ではなかなか役立っている。
目の前の患者対応をしながら、周りの様子もきちんと耳に入ってくる。他スタッフの電話対応から、きっとこんな内容だろうと推測して、先にカルテを開いて自分もすぐ対応できるように準備をはじめる。
まんべんなくマルチタスクをこなすには、いいのかもしれない。
そんな耳のせいで飲食店では情報過多になるのだが、ゲーセンでは騒がしいはずのノイズが案外心地よい。
人の会話がほとんど聞こえず、ガチャガチャとした環境音は、集中していると次第に遠ざかってゆく。
右手は機械的に、いいタイミングでメダルを投入し、左手で宣伝会議賞に応募する。
たまにゲームで当たりそうになったときだけ手を止め、一度顔をあげる。
静かな環境でじっと椅子に座って考えるよりも、いい具合に力の抜けた言葉が思い浮かんでくる気がした。たぶん、そんな気がしているだけなのだが。
途中、ものすごくトイレに行きたくなった。
メダルを持ち帰ることは禁止されているようだが、こういうときどうすればいいんだろう。
トイレに持っていっていいのだろうか。いやでも、衛生的にはよろしくない。
正解がわからなかったが、最悪盗まれてもいいような上着を椅子に置き、めんどうだがメダルを一旦バンクに預け、トイレにダッシュした。
戻ってみると他の人が座っているわけでもなく、上着もあり一安心。
その後もデカボスコアのコピーを考えつつ、メダルは減っては増え、減っては増えのくり返しで、なかなか底を尽きない。
なるほど、確かにこれはお金をかけすぎることなく、長時間楽しめるんだろうなと実感した。
だが、ついに底を尽きるときがきた。
元々無料でもらった80枚からはじまったゲームだ。ここで終わらせておけば、無料でここまで楽しめたね、よかったね、という話になる。
ただ、ここで一度、自分のお金でメダルを買ってみたい気持ちにもなった。
純粋にゲームを楽しみたい気持ちが6割、この心地よい場所で閉店ギリギリまでキャッチコピーを考えたい気持ちが4割だ。
おい、コピーが下回るんかい。
そういえばここ数年、友人に誘ってもらいシーシャのお店に行ったことが三回ある。
はじめは楽しみ方がよくわからなかったが、いい音楽といい香りで、ひとりで来ても読書や考え事が捗りそうだなと思った。
感覚としては、シーシャに近かった。
「この心地よい空間を味わっている」という意味では、メダルゲームをしながら公募に取り組むのも悪くないのかもしれない。そんなんで集中できるわけ…!という声も聞こえてきそうなものだが。
ここ2年ほどは「ガストのドリンクバーで、ひたすらコーヒーや紅茶を飲んで、何度もトイレに行きながらの宣伝会議賞応募」がお決まりだったから、これは新しい。
ただ遊びたい理由を探しているだけかもしれない。という自覚もしっかり持ちつつ、でもやってみないとわからないと言い聞かせ、300円で30枚購入することにした。
ほぉー。こうして人は、というか自分はメダルゲームにハマっていくのだな。
人が何かにハマるメカニズムは、行動する→何かしらのいい結果が得られる→行動が強化される→その繰り返しである。
今回「久しぶりにひとりで羽を伸ばしてリラックスできた」「ドーパミンがドパドパ出るのを感じた」「思いのほか公募が捗った」という学習をしてしまった。
この先宣伝会議賞に応募するたびに、メダルゲームがチラつくようになるかもしれない。
一度きりじゃまだそんな脳内回路にはならないかもしれないが、このわたしのことだから信用ならん。
そう思いながらも、心地よさを感じながらコピーを応募し、制作意図を打ちつつまた新しいコピーが浮かび、今までの駄作を思い切って削除し、時折ゲーム画面を眺め……をくり返した。
閉店間際になると確変を重ね、最後の10分はキャッチコピーなど頭に浮かばず、目の前のゲームに没頭した。
最終的に69枚になり、バンクに預けて終了。
きっとまたやるだろう。どんな頻度で、どんなときに行くことになるのかはわからないが。
「競馬に加えて自分が満たされる方法のひとつになるのか」と試みたメダルゲームであったが、答えは「半分イエス」と言えるだろう。
さあ、ご遊戯いたしますわよ!!
と存分に楽しんだきょうを忘れたくないから、こうして深夜1:39に書き留めているのであった。
たぶんだけど、メダルゲームのジャラジャラ音を聞きながらnetkeibaを開いて馬券を買うのが、いっちゃん気持ちいい。


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