精神科看護師が本音で話す|#5 カルテを読み耽る夜勤と、キャッチコピー。

精神科看護師が本音で語る
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病棟時代、夜勤中のちょっとした余白の時間に、カルテの生育歴を眺めるのがすきだった。

 

わたしが働いていた精神神経科病棟は、いわゆる「精神科救急」と呼ばれる、地域の精神医療の受け皿としての役割を担っていた。

具体的には、重症な方を受け入れたり、当番制で措置入院が必要な方の対応を行う。

警察官や市の職員が夜の病棟まで同行することもあった。

深夜の緊急入院は少なくなかったが、慌ただしい中にもわずかな余白はあった。

 

落ち着いているタイミングでは、その日の夜勤ナースと近況を話したり、飲みに行く予定を決めたりもした。

そこまで親しい間柄ではないスタッフとの勤務では、参考書を読んだり、勉強会の資料を作ったり、看護サマリーをまとめたり。

日々の通常業務に加えて、とにかく+αの仕事が多かった。

残業代がつかないことも多く、夜勤中の余白にねじ込むしかなかった。

 

時間を捻出して、やるべきこと・やりたいことが多々ある中で、カルテに書かれている生育歴を読むのがすきだった。

家族構成や同居者、出生から学生時代、職業、日常生活まで。

今までどう生きてきて、これからどう生きたいか。

人の歩みというものに関心があった。

 

そんな生育歴をじっくり読んだからこそ、一見奇怪にも思える言動が、症状の類ではないことに気付くこともあった。

一人ひとりの本来の言動や性格、暮らしぶりが見えてくることもあり、誤解のないように、丁寧に物語を読み解くような感覚だった。

 

日本の方ですら相手のことを正しく理解するのは難しいのに、馴染みのない国籍の方の入院では、さらに頭を悩ませた。

その国の慣習なのか、その方の本来の言動なのか、あるいは精神症状により出現しているものなのか。

判断がつきにくい。

たとえば、トイレの床や壁に濡らしたペーパーを貼り付け、蛇口の水を出しながら祈りをささげている。

これはいったい、なんでしょうか。

 

どんな価値観のもと、どんな言動につながっているのか。

相手をよりよく知るために、カルテをじっくりと読み解くようにした。

もちろん、生の声に勝るものはない。これは間違いない。

しかし、精神症状が悪化しているとき、また多忙な病棟業務の中では、じっくり話す時間を確保することは容易くない。

そんなとき、カルテの情報が一助となるのは確かだった。

 

********************

 

以前、コピー仲間のみなさんとの飲み会で、「どうやってコピーを作るか」という話になった。

先入観のない第一印象から感覚で言葉をつむぐ人もいれば、ありとあらゆる情報を読み込んで分析し、現代国語の問題を解くように言葉を練りあげる人もいる。

そんな話で盛り上がった。

 

自分はというと、後者のタイプだと思っていた。

課題のオリエン文を読んだら、企業や商品に関する記事、SNS、口コミなどを片っ端から調べる。

そりゃあもう、ストーカーかってくらいに隅から隅まで眺めて、キーワードを見つけて広げていく。

そんなやり方で進めることが多かった。

 

「先入観のない状態で書きはじめる」という方法を教えていただいてからは、まずは前情報なく書けるところまで書いてみるようになった。

行き詰ったらそこでようやく調べて、情報を持った上でまた書き進める。

最近はそんな方法を試している。

(結果は伴っていないが)

 

人を知ることも、コピーを作ることも、近しいことをしていると思う。

先入観なく話を聞くことと、既存の情報を丁寧に読み解くこと。

両方がそろって初めて、その人の本来の姿や言葉の芯が見えてくるのだと思う。

 

自分一人では知りえなかった世界にふれられるのもいいよね。

患者さんや利用者さんに教えてもらってすきになったものも、コピーの課題をきっかけにすきになったものもある。

先週末とかあれよ。

たまたま「tvkハウジングプラザ横浜」っていう、日本最大級の住宅展示場の横道を通ったのよ。

久しぶりにラジオCMの課題を眺めて、SBCハウジングで応募したばっかりだったから、妙にテンションがあがっちゃって。

夫に「ちょうど最近考えてたのよ~」と報告して、よくわからんけど楽しそうでよかったねと言わんばかりの、あたたかい眼差しを向けられたところでした。

 

これからも、人というものに関心を持ち続けたいです。

 

 

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